ヴィレッジ この村の犠牲者は誰だ?

最初に言っておくと、最後にネタバレとなる内容がある。

ネタバレでないとこの作品の良さが伝えられない。

見たくない人は見ないでね。

 

この作品、ミステリー(ホラーとして紹介されていたところもあるらしい)にジャンルされていたけどドラマの部類だといった方が正しい。

確かに、村ぐるみで大きな秘密を抱えているけど、それを暴く物語ではない。

 

それから、この作品は見る人を選ぶ映画。

個人的には好きだけど、派手なシーンは無いので短調でつまらないという人は多いだろう。

でも内容、表現したいものを見れる人はこの映画を楽しめるハズ。

あとは紹介されているとおりにミステリー、ホラーとしてこれを見たら「なんだコレ」となってしまう。その辺注意。

 

 

あらすじ

森の奥にある小さい村。

ここでは皆が協力し、村の中で自給自足の生活をしている。

 

この村には『森に入らない』という『掟』がある。

周囲の森には『怪物』がいて、彼らと『共存』するために『境界線』があり、それを超えてはならない。というもの。

 

このあとは、主人公のアイヴィーやルシアスの生活風景が続き、その中で『皮を剥がれた動物の死体』とか、『危険な色』といった物が登場し、この村のしきたりや掟を知ることが出来る。

 

ある日、村の若者の結婚式が行われ、村人全員で祝っていると鐘が鳴る。

森の見張り台の鐘で、見張り番が『赤いローブ』を羽織った『怪物』を見かけたのだ。

みんな急いで地下室へ避難。

翌朝、外に出ると扉に『怪物』からの警告である赤い印がつけられていた。

 

その夜、村の若者ルシアスとアイヴィーが愛を告白、婚約をする。

翌日、それを知った若者ノアはルシアスをナイフで刺してしまう。

 

ルシアスは重症を負い、感染症にかかってしまう。

彼を助けるため、アイヴィーは『年長者』の父に懇願する。

森へ入り、町で薬を買いに行きたいと。

 

 

 

感想

最初にも書いたけど、これはホラーとかミステリーではない。

村人を縛る『掟』や恐怖させる『怪物』が登場し、村自体が秘密を抱えている。

でもこれらがメインではない。

 

村人の生活風景のなかで人物の描写や小さな出来事を把握していくことで、登場人物の感情移入や伏線なんかも描かれている。

そのせいでちょっとテンポが悪く感じてしまうかもしれない。

 

ルシアスが刺される事件までで上映時間の半分は使っている。

この時間を楽しめないと勿体無い。

じっくり見てこの村の生活の良いところや問題点を探してみるといい。

 

あとはラストのすべてがうまくいった展開は好き。

上手に仕上げたものである。

 

 

この村の真実・怪物の正体

この先ネタバレ。

見たくない人は見ないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この村は化物がいるような世界ではない。

森を出れば普通の世界。

車が走り、ビルが並ぶ街が存在する。

 

そんな世界から離れて生活したい人間が集まってできた村なのだ。

その人間は『年長者』である。

彼らは何らかの犯罪で家族を亡くし、この悲しみを2度と味合わないようにと『世界と隔絶した村』を作りあげた。

 

その過程で何も知らない若者が外に出たがらないように、森に怪物がいるとか、赤色が危険とかいったルールができて、それが定着した。

 

実際、村の若者は『怪物』を信じて恐れ、森に入ろうとしない。

でも怪物は『年長者』が被り物をして演じているだけ。

現実社会に『怪物』はいないのだ。

 

 

これが村の真実。

古くから続いたように見えた村の生活は、『年長者』が作り出した『年長者』が望んだ歴史の浅い世界。

 

その世界を壊さないで外に行けたのは、アイヴィーである。

彼女は生まれつき盲目なので、村と外の世界の違いがわからない。

(盲目の子を村から出すなんて普通しないけどね。)

森の外で車があっても「聞きなれない音がする」程度で済んでしまう。

 

 

そしてアイヴィーが森に『怪物』がいるということを真実にしてしまう。

ルシアスを襲ったノアは隠されていた『怪物』の着ぐるみ?を見つけ、それを身につけてアイヴィーを追う。

アイヴィーは『怪物』に襲われると思い必死に逃げ、最後は撃退してしまう。

そこで『怪物』の着ぐるみを着たノアは死んでしまうが、『年長者』は『怪物』の撃退

を真実とし、ノアは怪物に殺されたことにして話を終える。

 

盲目だからこそ世界を壊さずにルシアスを助けることができたアイヴィー

この結果がよかったどうか別にして、様々な問題を抱えた上でこの村が存在することがよくわかる。

 

 

この村の問題

ストーリーには関係ないが、個人的には先程も書いた『歴史の浅い』ということが重要。

今の『年長者』は全てを知っている。

だが他の村人はそれを知らない。

つまりは『継承されていない』というのが問題で今後だれも外の世界を知るものがいなくなり、でも外界を接触をしなければいけない、あるいはしてしまった場合にどうなるのか。

 

若者に年寄りの嘘を告白しない限り、この問題は解決しない。

それを聞いた若者が、外の世界に興味を示さず、またこの村の存在自体に疑問を抱かないでいられるのか。

 

もしそのいずれでもない場合、ノアのような犠牲者がまた現れるのか。

どちらにしてもいつか破綻するであろうこの世界に余計な心配をしてしまった。

 

 

 

では、本日はこの辺で。しーゆー!