犬神家の一族(2006年版) とんでもない遺言に隠された真意とは?
この映画といったら『湖から足が突き出た状態のアレ』を想像する人が多いのではないか?
あとは白いマスクで顔を隠した男かな?
この辺がとても有名だけど映画自体をしっかり見たことはないって人もいるだろう。
うちの嫁さんが正にソレ。
先日、何故か「急に見たくなった」と言ってレンタル。
こちらは過去に1度見たことがあるので、個人的には1976年の作品が見たかったけど置いてなかった。
でも仮に置いてあったとしても出演者の大半を知らない気がするので、そういった意味ではこの2006年版のほうが見やすくていいのかもしれない。
あらすじ
昭和22年、信州那須市。
犬神財閥の長、犬神佐兵衛が亡くなり、親族は遺産相続の内容が気になって仕方が無かった。
佐兵衛が息を引き取った際、顧問弁護士の古館が親族にこう告げる。
「遺言書は私が預かっています。ですが開封には条件が有り、一族全員が揃った席で開封することとなっております。」
ここで一族を紹介。
まず、佐兵衛は独身。奥さんはいない。
でも子供は娘が3人いる。どれも愛人の子で、母親は3人ともバラバラ。
長女の松子、旦那は居らず息子の佐清がいる。
次女の竹子、旦那の虎之助と息子の佐武と娘の小夜子がいる。
3女の梅子、旦那の幸吉と息子の佐智がいる。
人名の文字の色を変えたのでこれでわかりやすかな?
合計でこの9人が揃わないといけないということ。
この時、佐清だけがこの場にいなかったために遺言書の開封ができなかった。
佐清は戦場に駆り出され中国へ行っっておりまだ復員していない状態で、半月前に博多に戻ったばかりだった。
※この場には親族ではないが佐兵衛の恩人の孫で、犬神家で一緒に暮らす野々宮珠世がいた。
その後、古館の助手の若林から遺産相続の件で依頼を受け、金田一耕助が那須市に到着する。
金田一は指定されたホテル(旅館)にチェックインし、若林に連絡をする。
その後、ちょっとした騒動が有りホテルを飛び出た金田一。
騒動が済んでホテルに戻るとオーナーに「人が訪ねてきたよ」と言われる。
しかし部屋には誰もいない。
そして悲鳴が聞こえ、駆けつけるとそこには若林の死体が。
古館が事の経緯を聞き、金田一に改めて協力を依頼する。
後日、博多から佐清が犬神家に戻ってきた。
しかし彼は黒ずきんで顔を隠していた。
そして遺言書が開封される日。
流石に顔を見せない佐清に不信感を抱く一族に、顔を見せる佐清。
戦争で負った傷として口から上は酷い火傷、声帯も痛めたため声も変わっていて、結局誰も本人であることを確認できなかった。
不信感を拭えなかったが、親族が揃ったので気になって仕方ない遺言書の開封を行う。
遺言書の内容は簡単に説明するとこんな感じ。
1、全財産を珠世に相続させる(但し条件付き、その内容は2で説明)
2、珠世が相続するには3ヶ月以内に佐清、佐武、佐智の誰かと結婚すること
・珠世が3人との結婚を放棄したら無効、多分3の内容が適応される
・3人のうち亡くなってしまった者を選ぶことはできない
3、珠代が3ヶ月以内に死亡した場合
・犬神家の全事業を佐清に相続
・財産はまず2割を犬神奉公会に寄付する
・残りの財産を5等分し、佐清、佐武、佐智に5分の1づつ相続
・残り5分の2は青沼菊乃の息子、静馬に相続
ここで松子たちが怒り出す。
娘である自分たちに相続する権利がないことや、恩人の孫とはいえ珠世が相続の中心になっていること。
そして何より、青沼静馬に相続権があること。
※静馬は佐兵衛が50歳過ぎてできた子供。
ちょっとした事もありこの家には居らず、消息も不明。
親族として数えられていない人間に財産が渡ることが我慢ならない様子だったが、珠代が自分の子と結婚すれば全財産が手に入ることになると気がついた松子達。
こうして珠世争奪の戦いが始まる。
後日、佐武から呼び出された古館は、金田一と共に神社に向かう。
そこには、佐清が出征する前に収めた『奉納手形』が残されていて、これと今いる佐清の手形を合わせて本人確認をしようという考えである。
それを松子と佐清に話すと松子が激怒。
「絶対にやらせない!」と言ってその場を後にする。
この日、この街の宿に戦場から戻った男が一人宿泊する。
顔を隠し、字も書けないから宿帳の記入を女将に任せる怪しい男。
この男はその日の夜遅くに外出したり、次の日の朝早くに出ていくという謎の行動をする。
そして次の日。
佐武の生首が菊畑の菊人形の首とすげ替えて置いてあるのを発見される。
金田一が危惧したとおり、殺人事件が発生する。
感想
この手のストーリーだと、1度見たら犯人が分かっているから2度目はない。
そう考える人もいるかもしれないが、自分は2度目でもとても楽しめた。
確かに、大分時間が経っているけども。
この作品は『血族』という関係性ならではの憎悪とか嫉妬、親子愛なんかがよく描かれたストーリーであり、犯人が誰かわかっていてもとても見ごたえがある。
あらすじでも紹介した遺言の内容なんか見れば、犬神佐兵衛は何を考えてこんなもの残したのか理解できないだろう。
自分の子供は対象にせず、恩人の孫がメインで自分の孫3人が控えといった感じで、こんなの揉め事のキッカケになるのはわかるハズ。
でもこれにも、犬神佐兵衛の想いが隠されており、彼の真意を知るととても強い愛情と共にその非常さを知る事になる。
オリジナル版(1976年)との違い
このリメイク版はオリジナル版と違いがあるらしく、オリジナルを好きだった人が見るとちょっと違和感を感じたりするらしい。
自分はオリジナル版を見たことがないので分からないが、リメイク版では佐清と珠世の関係性を濃くしたり、ラストも変更が加えられている。
個人的には最後の真犯人の行動に対する金田一の対応が違うらしく、その辺の違いを確認してみたいと思っていた。
そもそもオリジナル版が置いてなかったし、見比べるにはリメイク版の記憶も鮮明ではなかったので両方見ないといけなくなるわけだけど。
とにかく金田一の演技の意味合いが全然変わってくるらしいので、またいつかその違いを確認してみたい。
金田一耕助の立ち位置
この話は以前、何かで読んだことがあるお話でちょっと記憶が曖昧なのが申し訳ないが、面白いと思ったので紹介。
この映画の監督『市川崑』は金田一を『傍観者』として考えていたらしい。
金田一耕助は事件を未然に防ぐ、解決するのが役割ではなくて事件の結末を見届けること、犬神家一族に関わる人間のつながりを見ている側に説明するのが金田一耕助の役割。
そう考えると、金田一耕助は主役ではなくナレーション役になってくる。
この監督の考えを知った上で見てみると、特にラストシーンなんかは違った見え方がして面白い。
では、本日はこの辺で。しーゆー!